
韓国人はワイルドだ。
良い言い方をすれば大胆。悪い言い方をすれば適当。
これは日本に留学に来ていた韓国人の後輩の引っ越しを手伝うことになったある日の話。
雨風のすごい日だった。
よりによってこんな日に引っ越しとは。
引っ越しに使う車は韓国人の先輩がレンタカーを借りに行くことになっていた。
レンタカーを借りてから先輩が僕の家まで迎えに来て一緒に後輩の家に行くという話だったので僕は自宅で待機していた。
電話が鳴る。
先輩:「もうすぐ着く。家の前に出てこい」
僕:「分かりました」
特に持って行くものもないから身一つで外に出る。
やっぱり雨風が強い。
遠くの方からこっちに向かってくる白い車が見えた。
「ん…?へっ!?????」
よく見たことのある車だ。
まさかの軽トラだ。
荷台がオープンカー。
(マ、マジか…)
こんな雨風ヤバい日に軽トラで引っ越し。
悲劇の結末しか見えない。
荷台には荷物を雨から守るためのブルーシートが折りたたんで載せられていた。
しかしすでにそのブルーシート自体が濡れている。
(自分の引っ越しじゃなくて良かった…)と思いつつ、後輩に同情しながら後輩の家に向かった。
その後輩は留学生の中でも比較的裕福な家庭のようだ。
部屋も広く、大きなテレビや長いソファーまである。
軽トラを見た後輩は当然のことながら心配していた。
しかし韓国の文化では先輩に逆らうことは難しい。
あきらめ気味に引っ越しは始まった。
今住んでいる部屋から荷物を車に積む担当と、引っ越し先の家で到着した荷物を部屋に運ぶ担当に分かれた。
僕は引っ越し先の家の方の担当。
3~4往復くらいで終わりそうだ。
部屋から荷物を積む⇒先輩が車で運ぶ⇒届いた荷物を部屋に運ぶ⇒その間に先輩が荷物を取りに行くといった感じ。
エレベーターがあるから部屋まで運ぶのはそんな苦労しなかった。
到着した分を運び終えて先輩が来るまでエントランスで待っていた。
先輩がやって来て車をマンション1階の入り口に停め、僕たちは一旦エントランスに荷物を降ろした。
先輩とちょっと話してから、さて見送るかと思って荷台を見たらブルーシートが無い。
「?」
風で吹っ飛ばされて濡れた地面に落ちてた。
ブルーシートはもうベタベタだ。
後輩くんよ、許せ。君は引っ越し業者に頼むべきだったんだ。
すべて引っ越しが終わり、まぁ当然のことながら荷物は濡れて、ソファーも濡れて、でも奇跡的に買った時のダンボール箱が残してあった大きなテレビは何とか難を逃れた。
後輩曰く、これだけは何としても守らないとと思って死守したそうだ。
という事で、ワイルドな韓国人に引っ越しを手伝ってもらうときは車に気を付けましょうというお話。終わり。